「自分こみゅ」のすすめ

「自分こみゅ」とは何ぞ? 「自分とのコミュニケーション」の略で、私は「じぶこみゅ」と読んでいる。 実はここ10年あまり出身高校で年に一度授業をしているが、ある時この言葉を使ったところ、ほとんどの生徒が感想に「自分こみゅ」という言葉を書いていたので、これは良いぞといい気になって使っている次第(>_<)

わが子と関係、あるいは配偶者との、親との、様々な人との関係に困り感を抱いて親業やゴードンメソッドを学び始める方が多いと思う。 私自身もそうであった。わが子や生徒をどうにかしたい、変わってほしい、自分ももっと良き親になりたい、教師でありたい、そんな思いを抱きつつ学んだ。

親業の講座で数々のコミュニケーションスキルを学び、考え方を知り、実践しつつ、そしてインストラクターとなってからはお伝えするということもしながら、学びを深め力量を磨いてきた。自分としては成長してきたと思うし、人間関係に対応するやり方、姿勢や態度、人間観も磨かれてきたと喜んでいる。(もちろんまだまだ未熟な面を感じつつ)

その中で、この「自分こみゅ」の大切さと意義の大きさを実感している。人とのコミュニケーションを通して自分自身を見つめ直していくこと、そうして自分自身と対話をし、自己理解を深め自己明確化を図ることがどれほど価値あることか。そのことを親業の講座の中でも伝えたいと思い、皆さんがそれを実感されていくひとときになりますようにと願っており、言葉を整え内容や流れに工夫を凝らしている。

私の長男は高校2年生の時身体の不調を訴え始めた。その少し前から学校を欠席するという予兆もあり、何かが息子の内面で起こっているとは感じていた。病院にも誘って共に行ったり、学校の先生方と話したり、夫婦で語り合ったり、様々な出来事があったなと思い出す。

結局彼は登校したり休んだり、高校3年生を2回過ごしたり、専門学校に行く、1人暮らしをするなどの体験を経ながら生きている。

今日は、その頃の私の心情について書きたいと思っている。

彼の欠席が増えてきたり、腹痛を訴えたりし始め、そして大変暗い表情になっていったとき、もちろん親として心配もしたし不安にもなった。そして「自殺だけは避けたい」とまで思うようになった私がいた。生きていて欲しいとそれだけが望みのように思った時期もあった。にもかかわらず、息子が少し元気さを取り戻してくると、私の中に彼に対する様々な要求が頭をもたげ、心を支配し始めた。

高校だけは卒業したら?少しは勉強したら?家にいるのなら洗濯物くらい取り入れて畳んだら?夢中になれることと出会えたらいいな。元気で生き生きと生きていけます様に。

そうして自分の心の声と会話しつつ、息子を見守りつつ、時には彼を責める気持ちになりつつ、何年かを過ごした。

ふとある時私の心に響く声があった。

「あなたは息子が生き生きと生きていないと愛せないの?」「何かに夢中になって生きていないと彼を認めることができないの?」

いや~参りました、この問いかけ。息子のことを見守り大事にしている母だと自認する気持ちもいくらかあった私だったが、「自分こみゅ」してみると、

「息子が生き生きと何かに夢中になって元気で生きる姿を見たい、そんな息子であってほしい」という声が自分の中にあることを否定できなかった。では、そんな彼ではないと愛せないのか?という私の内に生じた声を聞いて衝撃を受け、感じたのは、「いや~ヤバイよ、これはマズイ」でした。

まずいぞ、ワタシ。私の愛はまがい物じゃないの⁈ 自分が安心したがために相手に望みをかけ要求しているだけではないの⁈ ありゃ~これはマ・ズ・イよ! 彼のいわゆる「不登校」に関わりつつ、踏ん張っていたはずの自分だけれど、まだまだ私自身の次元を高め磨きを掛けねば!と思えた。

その後徐々に「ありのままの相手を愛すること、受け止めること」を意識して、自分の行動や発言に耳を澄ませチェックし始めた。 何とかもっと大きな器の自分に近づくべく「自分こみゅ」した。

それから数年、今の私はその「自分こみゅ」しつつ歩んだ成果が出ているだろうかと自問する。だいぶ変わったぞという少しばかりの達成感もあれば、まだまだ取り組んでいきたい(取り組むべき)課題もあるなと自覚もしている。

自分の外の存在とのかかわりを通して自分を見つめる、自分と会話をすることの意義は確信しているので、今後もゴードンメソッドのスキルを携え「自分こみゅ」をしつつ、在りたい私に近づく喜びを味わいながら「人生の山歩き」をするつもりである。

その時に仲間との交流も大きな刺激と支えになる。 私にとって受講生さんは共にゴードンメソッドを活用しながら人生の山歩きをする大事な仲間と言える。 その仲間との交流を大切にしながら、更に、まだ親業と出会っていない方とご縁がつながり、共に人生の山歩きをしていくことができたら幸いである♡

2022.4.27